フリーメイソン Ⅰ

 

ある方と会うので是非ついてきて欲しいと日本からお越しのお客様に言われ、私はお客と共に香港島のピークトラムのある駅付近へ足を運んだ。

 

そこは、メンバーオンリーの建物でしたが、招いて下さった方の名前を告げると、どうぞ中でお待ちくださいと奥に通された。

 

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奥で西洋人ふたりが何事か話しており、私の存在が気になるのかおしゃべりを止めてじっとこちらを見つめてきた。私は目を合わせぬように別の方向を眺めるふりをする。そして別の広い室内に通されたのだが、そこには白いテーブルクロスが掛けられたいくつもの食卓が。

 美しいシャンデリアと目を引くステンドグラス。

 

椅子の背もたれにはコンパスと三角定規をモチーフにしたマークが。そして、ステンドグラスにも同じくこのマークと三角形に眼のマーク プロビデンスの眼。

 

そう、ここは謎の秘密結社と言われるフリーメイソンのロッジの中だった。イギリスを発祥とするフリーメイソンのロッジは世界中にあるが、ここ香港は1997年まではイギリスの植民地、ロッジがあってもおかしくはない。ただ、ここには、ロッジという名称ではなくHALL(会館)と呼ばれている。

 

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私のお客を招いてくださった方はアイリッシュ系のイギリス人で、恰幅の良いおじさんだった。広東語もペラペラで、給仕の香港人をファーストネームで呼び仲良さげに話す、いかにも紳士という方だった。

 

お客に香港に住む我々の友人だと紹介され席に着いた。他の食卓にはまだ誰もおらず、我々だけだった。我々を招いて下さった方は、とても気さくに話してくれた。

 

彼はとても日本が大好きだという。それも、神戸という街が一番のお気に入りでハネムーンも神戸だったとか。とてもファニーな方で、要所要所で関西弁のワードを口に出して笑いをとる。こちらも負け時と私のファミリーネームはBALD UNDERという意

味で、自己紹介の時は恥ずかしいと言うと、声をあげて笑ってくれた。日本のファミリーネームは特殊で数件しかない物もあると教えると興味をもってくれた。

 

すると、急に「君の目の前にある絵を見てごらん」と言われ、壁にかかった絵をみると、そこには OHISAMA LODGE とローマ字で書かれていた。「これは日本から持って来たものなんだ、既にこのOHISAMA LODGEは閉鎖されたから、ここ香港に運ばれたんだよ」と説明してくれた。

 

「あそこで食事してる人もフリーメイソンのメンバーだ」

 

話に夢中になってわからなかったが、いつの間にか我々以外の食卓にも食事をとっている人々がいた。