落ちない汚れ15

一体なぜ日本本社と私がまったく関わりのなくさせたのか疑問が残

る。

 

平木が、日本本社と関わりをなくしたかったのは、私個人だけでな

く、香港支社そのものであった。

 

今まで日本の企業の支社として存在していたものを、急に関わりを

なくしてみても、足跡は残ってしまう事を考えなかったことが、後

の平木の敗因となるのだが、稚拙な裏工作だった。

 

平木の目的はずばりそのもの マネーロンダリングであった。

 

日本の本社が電話営業でしこたま儲けた金を香港に流す為に雇われ

たのが、平木だった。会長をうまくまるめこんで、入社して香港に

やってきたのだった。

 

平木のやり方はこうだ。日本と香港の関係を本社・支社とせず、まっ

たく別の会社とし、取引をさせる。

 

取引の業務としては、なんでも良いのだが、例えば日本から通販の

チラシ業務を請け負い、日本に発送する。とか、電話営業で使って

いた旅行業務主任のテキストを香港側で印刷発送。すでに印刷され

ていたテキストまでも、わざわざ日本から送らせて、再度送り返す。

 

物を送らない方法としては、アイディア料などの名目で、いかにも

特許を取得しているかのように見せ、日本本社から金を香港に送金

させ、香港側が受け取り、その金をプールさせておくという方法だっ

た。

 

その為には、香港支社の会社名を次々と変えていった。

 

また、最初の上司と繋がりのあった香港人をいいくるめ、事務所を

もたない名前だけの会社のダイレクターとし給料をしはらった。

 

香港は名義貸しでダイレクターを雇う事を合法としている。この法

律を悪用したのだ。

 

もちろん、その会社に本社と取引をしているように見せかけ、日本

からお金を振り込ませていた。

 

推測ではあるが、最初は会長も平木を雇ってよかったと思ったのだ

ろう。その証拠に当時 ハワイやグアムばかりで、香港には時々し

か来なかった会長が 急に何度も香港に来ては平木のじいさんを「

ヨイショ」していた。

 

その時、私は何故 日本本社と縁を切られ、日本で頂いていた給料

が一切なくなり、国民保健や年金が支払われなくなったことだけを

嘆き、それには、こんな裏があった事を一切知らされずに ただ黙

々と働いていた。