落ちない汚れ3

記事校正、お宅拝見、オーナーインタビュー、映画の記事、編集後記、そ

して特集記事。不動産情報誌の仕事は毎日が忙しかったが、まだ若かった

為か楽しかった。

 

編集長がOKを出すと思われる可愛い娘を友人や知り合いから見つけ出し、

特集記事やレストラン情報に素人モデルとして使わせてもらった。

 

まだ、モデル事務所の女性たちの撮影には、一切タッチさせてもらえなか

った。そんな事もあってか、私はプロのモデルに負けたくない一心で知り

合いの中から可愛い娘たちを口説き落としていった。しかも、素人に出せ

るお礼は現金ではなく、図書券でだ。

 

私は日本のバブル崩壊図書券で感じていた。

 

不動産情報誌だが、雑誌にでられる事を喜んでくれたのか それでも図書

券でモデルとしてでてくれる娘は存在した。

 

「あら、可愛い娘たち連れてるわね」

 

「あ、先輩」

 

少し年上の女性の先輩が撮影場所に来てくれた。綺麗な人とモデルとして

来てくれた娘たちが騒ぐ。

 

「ああ、でも もう人妻なんだ」

 

「え、結婚されているんですか、綺麗な人だよね」

 

同じ会社の先輩というだけだったが、身近な人を綺麗だと褒められて悪い

気はしない。ちょっと気恥ずかしい感じだ。

 

「美人だけど、すごく気さくなんだ。でも、年齢の事でいじると怖いんだ

けどね。」

 

「あら、なんか言った?」

 

「いえ、何も。皆で先輩の事綺麗ですねと褒めていたんですよ」

 

「素敵なお友達ね。今回のモデル可愛い娘ですよって編集長に伝えておい

てあげる。じゃあ 撮影頑張ってね」先輩はニコニコ顔で編集部にある事

務所に戻っていった。

 

〆切に追われて忙しい時もあったが、先輩方には可愛がられ、後輩もすぐ

に3人も入社してきて仕事仲間には恵まれた。満足のいく充実した生活を

送っていた。 そんなある日、1本の電話が掛かってきた。

 

「あ、覚えてる?私」