落ちない汚れ12

グァムのあるゴルフ場が閉鎖にみまわれたらしい。会長たちスタッ
フがよく行くゴルフ場なのだが、そこのスタッフを何人か会長は引
き抜いていた。
 
何故かそのスタッフ達はお互いが気に入っておらず陰口を言い合っ
ていたのだが、そんなスタッフ達が一番嫌がる人物を会長が引き抜
いたと噂がたった。
 
それが平木だった。
 
歳は59歳のロートルで、昔は商社の経理を勤めていたのだが、崩れ
てグアムのゴルフ場に勤務していた。
 
会長はそのゴルフ場から数人のスタッフを少しづつ雇い入れてグァ
ムで開いている洋服屋の店舗や事務所に置いていたのだが、平木が
会長に雇われやってきたのが、ここ香港だった。
 
後で聞いた話だが、給料も破格だった。日本円に換算すると100万
円との事だった。いったい、どう言いくるめてこの男は会長にすが
ったのだろう。そして彼らの古巣のゴルフ場は、後にすべからく倒
産した。まるで、未来を暗示しているかのように。
 
私の仕事は香港での化粧品の買い付けと発送業務だった。
 
C DIOR、LANCOME、CHANELなどの有名コスメブランド主に
取り扱う。
 
またコスメばかりでなくLVなどの有名ブランドのバッグからG-Shock
スポーツシューズ、ブラジャーなど、流行ものはどんどん取り入れて
チラシに掲載し取り扱っていた。一見華やかなように見えて実はそう
でない。
 
お客様から注文があれば、一軒一軒探しまわりそれは小売店が閉ま
る時間まで及んだ。なかなか見つからない商品を見つけ出した時は、
やはり喜び、苦楽を共にした上司もそれは認めてくれた。
 
今ではこの狭い香港で数百店舗もある化粧品のSASAも、以前はそこ
まで店舗数も多くなく、他の店も含めて 香港中の化粧品店やブラ
ンド店はどこにあるか網羅していた。
 
それは日本のデパートがたくさんあった時代だ。
 
銅鑼湾のジャンボSOGOをはじめ、三越、大丸、東急、松坂屋など、
たくさんの日本のデパートが香港で華やかに活気づいていた時代で
もあった。
 
小売店で商品がどうしても見つからない時はDFS、それでも見つから
ない時は、お客の信頼を勝ち取る為に赤字を覚悟でデパートの化粧
品店で購入した。
 
通常、商品を仕入れ赤字でその商品を売ってしまっては、商売がな
りたたない。しかし、会社は儲かり続けている。このカラクリはど
こにあるのだろうと思うが、
 
実は香港でのこの業務は会社の大きな利益を占めていない。この会
社、グァムやハワイに洋服や高級和食屋など店舗を持つが、実質的
に利益を上げているのは、日本の電話営業なのだ。全国に営業部隊
の事務所を立ち上げ、電話一本で旅行業務主任免許の学習書などの
売り込みだった。
 
そんな中で一番の販売戦力となるのが、「チラシを配り、その配ら
れたチラシで商品を購入したらその10%があなたの利益になりま
すので、代理店になりませんか?」という営業だった。