小さなお客様

禿頭の方と出会う場合、正直どうしたら良いかいつも狼狽えてしまう。

 先日お会いしたお客様は立派な禿げ頭の持ち主であった。私から「はげちゃんと呼んでくださいね」とはなかなか言いにくい。それでも、笑いながら頭をさすり「はげちゃん」と呼んでくれた。

 私はそう呼ばれると とっても仲よくなれる。

 もちろんお客様のお人柄のおかげだが、今回は小さな影の立役者 お客様の娘さんのおかげでもあった。

 

さて今回は3歳児の元気な女の子連れで奥様と共に香港においでになられたお客様。第一子の場合どこの家でもそうだと思うが、なんでも子供が最優先。

 

特にお父ちゃんは2の次、3の次で、子供の笑顔さえあれば 他にはなんにもいらないという幸福な御家族だった。香港には、パンダのいるオーシャンパークや、日本に比べて全然待つ必要がない香港ディズニーランドもあるのだが、その女の子はどうしてもバスとトラムに乗りたいと御所望されたのだった。

 

空港にお客様をお迎えし、ホテルへチェックインするとまずは飲茶で腹ごしらえ。ここでも、小さなお客様の御要望は動物の形をした点心。

 いやぁ 素直に喜んで召し上がってもらえました。

 味も美味しかったのですが、やっぱり 動物の形をした点心、

 店員さんに運ばれて、蒸籠のふたが開けられると子供さんは夢中になるものなんですね。

 

f:id:hongkong-blackguide:20140411133734j:plain

 

次に街中をゆっくりと走るトラム(2階建てのチンチン電車)に乗り込んだ。偶然にも2階の一番前の席が空いており、車窓から香港の街中の風景を楽しむ。子供さんは誰にでも手を振る。歩いているおじさん、おばさん、すれ違うトラムや2階建てバスの乗客。香港人は子供にうんと優しい、子供に手を振られた事に気が付けば、皆にっこりと手を振りかえしてくれる。

 

我々の前を行くトラムの最後尾の乗客は外国人観光客なのであろう。カメラのファインダーを覗いて香港の車窓からの風景を楽しそうに見つめている。こちらのトラムと近づくと直ぐにこちらの手を振るお嬢ちゃんに気が付いて手を振りかえしてくれた。

 

f:id:hongkong-blackguide:20140411133750j:plain

 

トラムを降りると今度は2階建てのオープントップバスだ。この小さなお客様もきゃっきゃ きゃっきゃとはしゃぐ、はしゃぐ。いつになく饒舌となり、今まで親御さんも聞いた事のないフレーズがでるでる。

 

「ねえ、この子こんな言葉いつ覚えたのかしら」とお母さんもびっくり。

 香港に着いた空港の中で 眠たげに「ねぇ 香港ってどこ?」と言っていた口が、オープントップバスに乗っている間は「ホンコン サイコー」と笑顔爆発させている。

 

美味しいマンゴープリンをほお張ったり、お父さん、お母さんに囲まれてスターフェリーに揺られたりしているうちに、いつの間にか寝てしまわれた。ベビーカーに眠るお子さんを乗せ、大人はこっそりと夕食をとり、歩いてホテルに戻る。

 

次の日は九龍公園の遊具場で遊んだり、初めてフラミンゴを観たりと楽しんだ。家族で行った素敵な香港旅行はまさにプライスレス、 お子さんの中では香港は良い思い出となってずーっと ずーっと記憶していてくれるに違いない。

 

 

 

さて、日本に戻り桜が咲き始めた日本からお便りが届く。

 

「香港では大変お世話になりました、娘にとって香港の一番の思い出は、はげちゃんと乗った2階建てバスのようです。こちらで走っている市バスを見ては 香港でバスに乗ったね!はげちゃんもいたね! と必ず言うので、ほぼ毎日 はげちゃん という単語を耳にしています。(笑)」

 

うーん 日本でバスが通るたびに「はげちゃん はげちゃん!」と娘さんに連呼されるお父さん。頭をさすりながら周りを気にして慌てる姿が目に浮かびます。笑

ごめんなさい